援交度セミナーではない(書いてしまった……)。何やら麗しき女性たちが真剣な面持ちで聞き入っているが、これは先週アワプラ「メディアカフェ」で開かれた、インターネットライブ配信の技術を学ぶ「エンコードセミナー」におけるヒトコマだ。「エンコード」とは要するに、眼の前に今まさに展開している風景をカメラやPCを使ってインターネット上に乗っける作業を指す。
例によって理系にはまるでトンチンカンな私が言うのも何なのだが、既に今日の技術水準では、放送とまるで縁のない一般の人でも市販のビデオカメラとPCを使って、自分が撮影した映像をインターネットに載せることができる。それもあらかじめビデオで収録したものだけではない「生中継」のものも含めて、だ。
もちろんウェブによるライブ配信には専門のストリーミング会社からの協力が必要となる(「ストリーミング」とは要するに流し込まれてくるデータを排水溝の渦巻きのように次々と画面上に送り込んでしまうことを指す。一方で井戸のようにデータをPCなどの一箇所に取り込んでから再生するのが「ダウンロード」)。ただ、最近では「ディジタルスタジオ」さんのように、ストリーミング会社が一般の個人によるサイト向けに無償でライブ放送用のサービスを提供してくれたりもしている。
ここで想像を逞(たくま)しくしてみよう。もしも世界中の人がビデオカメラを所有し、インターネットに自分が撮影した映像を乗っけられる技術を会得したら、どうなるのか?
自分がその立場にいるからわかるけど、基本的に事件や事故など「何かが起こった」現場において「職業ジャーナリスト」というのは「一番遅れて現場にやってくる人」だ。
もし仮に、イラクやレバノンに暮らす一般の人々が、爆撃を受けた直後から自分の周囲の様子を収録して全世界に発信できるようになったら、どうなんだろう? というか、それができるんなら一番いいよね。不謹慎な想像なようだけど、砲弾の下で死に行く人が「なんで私はこんなふうに死んでいかなきゃいけないの?」ってリアルタイムで訴えかけてきた時、日本の茶の間にいる人たちはどんな思いで見るのかな。
たぶん、それが実現した時にこそ「職業ジャーナリスト」たちは初めて自分の存在意義を真摯に自省するようになるのかな。それこそ今話題の秋田の事件で、現地にお住まいの方々による中継チャンネルが2〜3も立ち上がったなら、私だってそっちを見るだろうし、現地で取材してる「職業ジャーナリスト」連中も少しは大人しくなるだろうよ。
――と、話が逸れたけど、アワプラがどうしてこの時期にエンコードセミナーを(しかも無料で)実施したのか。簡単に言えばそれは「世界中の誰にでも、今まさに起こってる事象の生中継特派員になってもらいたい」からだ。
どちらかというと、これまでは長期間取材したものをパッケージ化のうえダウンロードで配信するというパターンが多く、ライブ配信といえば単発的な集会やイベントの中継が主体だったアワプラだが、この秋以降は週1回のペースで発信するライブ番組を放送していこうとの計画がある。そのための人材リソース確保という意味でも、今回のエンコードセミナーは「世の中のあちこちにアワプラの協力者を見つけよう」という、実に戦略的な意味合いが込められているのであった。
あ、最後に余談ですが、このほどアワプラ〜「FMわぃわぃ」経由で「ラジオ番組のパーソナリティをやれ」とのお達しをいただきました。たぶん今月末には第1回目の放送がオンエアされると思いますけど、はたして大丈夫なのかしら?(汗) 詳しくはまた後日。
(「
岩本太郎のメディアの夢の島」と同時掲載)

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