「8耐シンポ」の終わった翌日は昼過ぎまで爆睡。ようやく午後遅くになってよろよろと自宅から這い出し
都電に乗る。「ヤキソバ食いてー!」と思ったからだ。
……って、おい、ちょっと待て。なんで「ヤキソバ食いたい」=「都電に乗る」になるのだ? との疑問を覚えたのは都電の車内に乗り込んでからだったが、ほどなく答えが判明。「庚申塚(こうしんづか)」という駅に降り立つ。都電のどこだかの駅のホームに直結した焼きそば屋さんがあるというのが、何かで読んで頭の片隅に残っていたのだ。
厳密には「ヤキソバとオハギの店」であるらしく、狭いながらも小綺麗かつアンティークな風情の店内を、3〜4人のおばちゃんたちがいそいそと切り盛りしていた。ヤキソバ+オハギのセットで650円というメニューもあったが、どうもそっちには食指が進まず、500円のタマゴヤキソバを注文。しばし待つ間、すぐ目の前のホームに三ノ輪橋方面行きの都電が数台発着。下りたその足で店にまっすぐ飛び込んでくる乗客も何人かいた。店員のおばちゃんたちと言葉を交わし、注文したオハギを持ち帰っていく女性も。近所の住民たちにも結構愛用されているらしい。
ところでこの庚申塚電停、実は降りて踏み切りを渡ったすぐの通りが、かの“おばあちゃんの原宿”として有名な「巣鴨地蔵通り商店街」なのであった。一般にはJR山手線の巣鴨駅が最寄りとして知られるが、どうやら路地裏を往く都電の駅からぶらりと入れるこっちのコースのほうが面白そうだ。地名「庚申塚」の由来で、記紀で有名な猿田彦を祭ったお社も近い。
――なんて知ったような解説をしとりますけど(笑)、かくいう私も何も知らないままに、行き当たりばったりに降り立ったら偶然遭遇したというだけなのであった。
思いがけず眼前に開けた通りの喧騒を奥までぶらぶら進みながら「う〜む、アジアだなあ」と雰囲気に浸る。実際、歩きながら随分昔に訪ねたきりのタイやインドのバザールの様子を思い起こしたものだ。“おばあちゃんの原宿”ってのは、そういう意味では必ずしも100%的確な形容句ではないな、とも思った。確かに道幅も広く段差もなく、実際にお年寄りたちが安心した風情で大勢歩き回ってはいるけれど、ここには一〜二昔前の、まだまだ若々しきアジア的な香気に満ち溢れていた時代の日本の面影が残っているような気がした。
まあ「カラオケたろう」さんにもそのうちストレス発散を兼ねて行くことにしましょうかね(笑)。
帰路の都電は新しい型の車両に乗り合わせる。が、近々これよりもさらに新しい型の新車が入るらしく、それがなんと「
レトロ車両」なのだそうだ。しかし「最新鋭のレトロ車両」ってのもな(笑)。ともあれ、都電沿線には今もこうして「懐かしいんだけどバリバリ現役」的な世界が広がっているのであった。

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