メールでこの長文を書くのは、結構つらかった。
指痛いよ指。
あれ? もしかしてケータイ小説書いてる人ってすげーんじゃねーの!?
最近、ボクらの間で流行ってる『都市伝説(最近は怪談なんといわないんだ)』がある。
それは『にらめっこおじさん』の話だ。
夜に、塾から帰るのが遅くなったりすることがあるよね。
そんな時間、ちょうど人通りが消えた路地に『にらめっこおじさん』は出没するっていう。
急に後ろから楽しそうな女の子のような声で「にーらめっこしーましょー!」って聞こえてくるんだけど、その声に振り返っちゃいけない。
後ろには、物凄く怖い、お化けみたいな顔したおじさんが立ってるっていうんだ。その顔を視たら最後、あまりの怖さに心臓麻痺で死んじゃうっていう。
だけど、そんなものボクは信じてない。
だってそうだろ? 見た人が死ぬっていうなら、なんで凄い怖い顔だなんてわかるのさ?
そんなことを思いながら、ボクは塾の帰り道を歩いていた。
何時も一緒に帰ってるタクちゃんは今日は風邪で休み。暗い道には人影はない。ボクは一人だった。
……信じてないなんていったけど、実のところは、やっぱり少し怖かったんだけどね。
ボクは少し早歩きで家へと急ぐ。この路地を抜ければ、もう少しでコンビニの前に着く。そしたら、肉まんでも買って一息入れよう……今日はジャンプの発売日だったな、少し立ち読みもしていこう……
湧き上がってくる不安な気持ちを紛らわすために、ボクは別のことを考えながら道を急いだ。
「にーらめっこしーましょー!」
街灯に差し掛かった時だった。急に、女の子のような高い声が聞こえた。
ボクは振り返らなかった。だって、怖かったから。
「にーらめっこしーましょー!」
さっきよりも近い。後ろに居る。
いや、これはきっとイタズラだ。誰かふざけてんだ。そうに決まってる。
だけど……
ボクは、歩を進めながら意を決して、ちらりと後ろを振り返った。
そこに居たのは……
ハゲ頭で、前に少し残った毛がチョロンとカールしたおじさんだった。とっても変な顔をして、変な格好で、変な踊りを踊ってる。
「にーらめっこしーましょー!」
変なおじさんが変な踊りを踊りながら、変な声でいった。
ボクは思わず吹き出してしまった。
おじさんは嬉しそうに、「あっ! 笑った!」といって、カクカクとさらに変な動きをした。
それをみて、とうとうボクは大きな声で笑ってしまった。
「笑った子にはねぇ……」
笑いながらおじさんをみると、その手には、何か長い棒の様なモノが握られていた。
「罰ゲーム!」
おじさんは、手の中のそれを、ボクに振り下ろした。
ごき
ああ、バットだ。
「罰ゲーム! 罰ゲーム! 罰ゲーム!」
おじさんはボクにバットを振り下ろし続ける。
「なにがなにがなにがなにがなにがおかしいんだよぉぉぉ!!」
ボクの躯が、血と肉と骨の塊になった頃。おじさんはピタリと動きを止めて、そのままバットを引きずって歩き出した。
「にーらめっこしーましょー……」
ボクは、しみじみと噂というのは当てにならないものだなぁと思った。

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